かつて、静かな森の片隅に小さな映画館がありました。この映画館は人々の目にほとんど触れることがなく、その秘密は森の住人たちだけが知っている特別な場所でした。映画館の主ではあるモグラが主役の物語を今、始めましょう。
モグラは、いつも地下で忙しくしていましたが、異常な寒さの日、彼は地上へと向かいました。彼の小さな鼻が寒空をかぎ分けると、偶然耳に飛び込んできたのは、ラジオから流れる音楽と、ある映画の話題でした。彼はその話に魅了され、映画館への旅を決意しました。でも、モグラは映画館が何かも、映画がどのようなものかも知りませんでした。彼の心は好奇心でいっぱいでした。
—まあ！映画とはどんなものだろう？外の世界はどのようなものなのだろう？と彼は思いました。
モグラの小さな足は、雪をかき分けながら、彼をその秘密の映画館へと導きました。映画館への道は、彼が想像していたよりもずっと冒険的でした。彼は滑りやすい氷の上を横断し、深い穴を乗り越えなければならず、寒さと戦いながら、ついに映画館に到着しました。
映画館は、外から見ると、古びた壁と、かすかに光るネオンサインが不思議な雰囲気を醸し出していました。モグラは勇気を出して中に入りました。
中には多種多様な森の生き物たちがいます。小鳥たちはワクワクしているようにチュンチュンと鳴き、リスはポップコーンを食べながら互いに話していました。しかし、モグラはどの生き物にも話しかけることができませんでした。彼はただ、映画が始まるのを楽しみに待っていました。
—うわあ、これが映画館か！とモグラは目を輝かせました。
やがて、暗闇が訪れ、スクリーンには美しい映像が映し出されました。モグラは、映画というものが、ただの物語であるだけでなく、感情と冒険を共有する素晴らしい方法であることを理解しました。彼は感動し、映画が終わった後、涙を流していました。
そんな彼の肩を、やさしくたたく者がいました。振り返ると、そこにはモグラのお母さんが立っていました。
—お母さん！どうしてここに？
お母さんは優しく微笑みながら答えました。
—あなたを見守っていたのよ。あなたが安全に、そして新しいものを体験するためにね。
—僕、映画が大好きになったよ！外の世界がこんなに素晴らしいなんて知らなかった！
お母さんは、モグラが新しいものを受け入れ、成長する勇気を持つことを喜びました。
—映画は只の始まりよ。君の冒険は、まだまだこれからね。
モグラは、その日から、毎日が新しい発見となり、彼の好奇心は、彼をさらに遠くへと導きました。そして、彼はいつものようにラジオを聞きながら、次の冒険を夢見ていました。
